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東京地方裁判所 平成4年(行ウ)156号 判決

原告

甲野一郎

被告

東京拘置所長

川島浩

右代表者法務大臣

後藤田正晴

被告ら指定代理人

小池晴彦

外二名

被告東京拘置所長指定代理人

別府公昭

外一名

主文

一  原告の請求をいずれも棄却する。

二  訴訟費用は原告の負担とする。

事実及び理由

第一請求

1  被告東京拘置所長(以下「被告所長」という。)が平成四年八月二〇日付けで原告に対してした読売新聞社あて投稿文の発信不許可処分を取り消す。

2  被告国は、原告に対し金五万円及びこれに対する平成四年八月二〇日から右支払い済みまで年五分の割合による金員を支払え。

第二事案の概要

本件は、死刑確定者として東京拘置所に収容されている原告が、死刑制度存続の是非に関する自分の意見を読売新聞社に投稿しようとして発信の許可を申請したのに、これを不許可とされたことにつき、右発信を許しても、何ら原告の処遇に支障を生ずるものではないから、右不許可処分は違法であり、これによって右の問題に関する自分の意見を公表する自由を妨げられ、多大の精神的苦痛を受けたとして、被告所長に対し右処分の取り消しを、被告国に対し慰謝料の支払いを、それぞれ請求した事案である。

一死刑確定者の信書の発送に関する法令の規定

死刑が確定した者は、その執行に至るまで監獄に拘置される(刑法一一条二項)が、監獄法(以下「法」という。)は、死刑確定者の信書の発送について、特に独立に規定を置かず、「本法中別段ノ規定アルモノヲ除ク外刑事被告人ニ適用ス可キ規定ハ……死刑ノ言渡ヲ受ケタル者ニ之ヲ準用」するとしているに留まる(九条)。法は、在監者一般がする信書の発送について、「在監者ニハ信書ヲ発シ又ハ之ヲ受クルコトヲ許ス」(四六条一項)と規定するが、受刑者及び監置に処せられたる者については、「其親族ニ非ザル者ト信書ノ発受ヲ為サシムルコトヲ得ズ但特ニ必要アリト認ムル場合ハ此限ニ在ラス」(同条二項)、「受刑者及び監置ニ処セラレタル者ニ係ル信書ニシテ不適当ト認ムルモノハ其発受ヲ許サス」(四七条一項)と規定している。法は、「……信書ノ検閲……信書ニ関スル制限ハ命令ヲ以テ之ヲ定ム」(五〇条)と規定し、これを受けて同法施行規則(以下「規則」という。)は、在監者一般がする信書の発受について、「在監者ノ発受スル信書ハ所長之ヲ検閲ス可シ」「発信ハ封緘ヲ為サスシテ之ヲ所長ニ差出サシメ受信ハ所長之ヲ開披シ検印ヲ押捺ス可シ」(一三〇条)との定めを置くが、受刑者及び監置に処せられたる者については、「発信ノ数ハ拘留受刑者及ビ監置ニ処セラレタル者ニ付テハ十日毎ニ一通、禁錮受刑者ニ付テハ一月毎ニ一通トス但二十歳未満ノ受刑者又ハ之ニ準スル処遇ヲ為ス受刑者ノ発送スル信書ノ数ハ所長ニ於テ教化上必要ト認ムル程度ヲ標準トシテ適宜之ヲ増加スルコトヲ得」、「所長ニ於テ処遇上其他必要アリト認ムルトキハ前項ノ制限ニ依ラサルコトヲ得」と規定している(一二九条一、二項)。

二争いのない事実

1  原告は、海外進出企業等に対して継続して爆破闘争などを行う武闘組織である東アジア反日武装戦線に属し、昭和四九年八月三〇日の三菱重工爆破などのいわゆる連続企業爆破事件を引き起こした事件の被疑者として起訴され、昭和五四年一一月一二日東京地方裁判所において爆発物取締罰則違反、殺人、殺人未遂等の罪により死刑判決を受け、昭和六二年四月二一日に右の死刑判決が確定した者である。

2  原告は、昭和五〇年一一月一二日から東京拘置所に収容され、昭和六二年四月二七日以降は死刑確定者として処遇を受けている。

3  原告は、平成四年八月一九日、被告所長に対し、読売新聞社世論調査部「気流」係あての「死刑廃止と被害者の人権」と題する投稿文を添えて「発信許可願」と題する諸願箋を提出し、右の発信の許可を申請した(以下「本件出願」という。)。

これに対し、被告所長は、同月二〇日付で、本件出願に係る発信を不許可にすると決定し(以下「本件処分」という。)、同日、関係職員から原告に対しその旨を告知した。

三争点及びこれに対する当事者の主張

本件の争点は、本件処分が法、規則等の関係法令に違反するか否かであって、これについての当事者の主張は、次のとおりである。

1  原告の主張

(一) 死刑確定者が信書を発送することの許否に関する判断基準について

(1) 我が国の法令は、死刑確定者に対し刑の執行以前に課する自由の制限としては、被勾留者に対する自由の制限の内容以上のものは全く規定しておらず法及び規則において、拘置中の処遇に関して死刑確定者を刑事被告人よりも低い位置に置くこととするような特則は設けられていない。そして、刑法及び法は、刑の執行以前に死刑確定者の自由を制限する目的について直接言及する規定を置いていないが、右の法及び規則の具体的内容に照らせば、その目的は、受刑者の拘置のそれとは異なって、刑の執行に至るまで逃走を防止して本人の身柄を保全することにあると解される。

そうすると、法が、在監者の拘禁確保のために通常必要とされる以上に、積極的に死刑確定者を一般社会から隔離すべきことを命じていると解することはできない。死刑確定者は、刑の執行に必要な身柄の保全及びその前提となる施設の法秩序維持のため、法令に規定された限度において、その自由の制限を受忍する義務があるものの、それ以外の事項については、刑事被告人と同等若しくはそれ以上に、市民としての自由を行使することを保障されているものと解すべきである。

(2) 信書の発送を受刑者や被監置者について制限する規定は死刑確定者に準用されるものではないから、死刑確定者の発信には原則として制限がない。したがって、被告所長は、死刑確定者が定められた手続に従って発信の申請をした場合には原則として許可を与えなければならず、例外的に、①その発信が逃走その他の違法行為に利用されようとしている形跡が認められる場合、②その発信を許した場合に施設の法秩序維持が阻害される事態(例えば規律違反行為など)が生じる確率と、かかる事態が生じない確率とを比較すると、前者が後者を相当に上回っていることが認められる場合(すなわち、その発信を許すことにより施設の法秩序維持が阻害される事態が生じる相当の蓋然性があると認められる場合)、③その発信が施設の通常の事務能力から合理的に割出された発信通数や枚数等の一般的制限を超えるものであり、かつ、その超過を許すべき特別な事情も存しないものである場合に限りこれを不許可とすることができるものと解される。

死刑の執行に至るまでの間の死刑確定者の精神状態或いは心情の安定それ自体は、死刑確定者の拘置の目的ではないから、単に精神状態の安定が害されるおそれがあるとか、心情の安定に資さないといった理由のみで、死刑確定者の信書の発送を制限することはできない。

(二) 本件処分の違法性及び被告所長の故意過失について

(1) 原告は、昭和五四年頃から非合法闘争と訣別し、それ以降規律に違反するような闘争には一切関与しておらず、違法な手段で出獄するような気持ちは全くない。原告の支援者も、再審や恩赦等の合法的手段によって原告の生命を救おうと努力しているのであって、違法な手段で原告の身柄を奪取しようと企てているものではない。

(2) 本件出願に係る発信は、死刑制度の存続の是非に関する原告の意見を読売新聞社に投稿しようとしたものであって、その文面や内容から見て、右1(一)(2)の①及び②の基準に該当しないことは明らかである。また、東京拘置所においては、現在のところ死刑確定者の発信を原則として一日二通、一通当たり七枚以内に制限しているが、本件出願は右の制限の範囲内での許可を求めたものであるから、右③の基準に該当しないことも明らかである。したがって、本件出願については、これを不許可とすべき例外的な事情が全く認められない以上、被告所長はこれを許可しなければならなかったのである。

(3) 被告所長は、本件出願に係る発信のあて先が、原告が予め外部交通を行う相手方として申請していた者に含まれていなかったことから、そのような者にあてた発信を特別に許可すべき例外的な事情も認められないとの理由で本件処分をしたのであるが、右の外部交通の相手方を予め申請する手続(以下「外部交通許可申請」という。)は、法令に基づかない事実上の手続にすぎないから、外部交通許可申請に基づき、被告所長が当該相手方に係る外部交通を包括的に許可又は不許可とする処分をしても、この処分は当初から無効であり、死刑確定者の発信申請権には何の変動も生じない。

また、仮に、外部交通許可申請に基づき、被告所長がした当該相手方に係る外部交通を包括的に許可又は不許可とする処分に法律効果が認められるとしても、本件出願に係る発信の相手方である読売新聞社については、予め外部交通許可申請がされておらず、包括的な許可又は不許可の処分が存在していない。したがって、そのことは本件処分を正当化する理由とはなり得ない。

(4) 仮に被告らがその主張において引用する死刑確定者の接見及び信書の発受に関する通達を前提としても、本件出願に係る発信は、そこに挙げられている三つの事由のいずれにも該当しないことが明らかである。

(5) 以上によれば、本件処分には、法四六条一項に基づく被告所長の裁量権を逸脱し又は濫用した違法があり、被告所長は、その違法であることを知り、又は過失により知らないで本件出願に係る発信を違法に妨げ、原告がその意見を公表する自由を妨げ、もって、原告に精神的損害を与えたものであって、これを金銭で慰謝するには金五万円が相当である。

2  被告の主張

(一) 死刑確定者が信書を発送することの許否に関する判断基準について

(1) 法は、死刑確定者について原則として刑事被告人に関する規定を準用するものとしているが、これは、死刑確定者の拘禁も未決勾留の拘禁も、自由刑の執行としての拘禁のように拘禁自体に刑罰の執行という意味があるものではないことから、死刑確定者の拘禁について、自由刑の執行を受けている者ではなく、刑事被告人に関する規定を準用することとしたものに過ぎず、それ以上に積極的に死刑確定者と刑事被告人とを拘禁において同一に取り扱うべきことを規定したものではないと解される。そして、刑事被告人の拘禁は、いわゆる無罪の推定を受ける者の身柄を、専ら逃走及び証拠湮滅の防止を目的として拘束するものであるのに対し、死刑確定者の拘禁は、刑法が死刑執行の前置手続として定めたものに過ぎず、右各拘禁は、その目的及び性格を異にするものである。したがって、死刑確定者の処遇について、刑事被告人に関する規定を準用するに当たっても、その解釈・運用を刑事被告人と同一にすることを法が要求しているものではなく、その間の差異に応じた修正を施した上、その拘禁の目的及び性格に応じた適正な処遇をすることが要求されているものと解されるのである。

限られた物的・人的設備をもって被拘禁者の身柄の拘束を確保し、維持するためには、被拘禁者の移動の自由を制限するのみでは足りず、その他の各種の自由にも一定の制限を加える必要があるが、どのような自由をどの程度制限するかは、各拘禁の目的及び性格を考慮して、それぞれの拘禁毎にその確保のため必要かつ合理的な範囲において決定されるべきである。ことに死刑確定者にあっては、社会復帰はもちろん生命への希望さえも断たれているため、自暴自棄になったり、精神不安定な状態になったり、逃亡を試みる等、拘禁施設担当者の管理運営に支障を生じさせる危険性が高いので、特に精神状態の安定について配慮する必要がある。

以上のとおり、死刑確定者に対しても、移動の自由以外の自由について、その拘禁の目的や特質に照らして、必要かつ合理的な範囲内において制限することができるものというべきであり、監獄の長は、当該自由を制限する必要性の程度と、制限される自由の内容・性質、その制限の程度・態様、当該自由を制限される被拘禁者がそれによって被る具体的な不利益、すなわち当該自由を制限されることによる精神状態の安定性に対する影響とを慎重に比較衡量した上で、死刑確定者の当該自由を制限すべきか否かを決する必要がある。そして、右の必要性の判断に当たっては、刻々変化する死刑確定者の動静と微妙な精神心理状態を迅速かつ適正に把握することが不可欠であるから、これらを常に総合的かつ個別的に把握し得る状況にある当該拘禁施設の長に裁量権が与えられているものと解すべきである。

(2) 法は、信書の発受につき許可制度を採用しているが、右に述べたところからすれば、死刑確定者の信書発受の許否は、監獄の長の裁量に委ねられているものと解される。

そこで、通達「死刑確定者の接見及び信書の発受について」(昭和三八年三月一五日矯正甲第九六号矯正局長依命通達)は、死刑確定者につき、このような者は、死刑判決の確定力の効果としてその執行を確保するために拘置され、一般社会とは厳に隔離されるべきものであり、拘置所等における身柄の確保及び社会不安の防止等の見地からする外部交通の制約は、死刑確定者の当然に受忍すべき義務であるとし、さらに、死刑確定者が罪を自覚し、精神の平安裡に死刑の執行を受けることとなるよう配慮されなければならないことは、刑政上当然の要請であるから、心情の安定を害するおそれのある外部交通も制約されなければならないとして、具体的には、①本人の身柄の確保を阻害し又は社会一般に不安の念を抱かせるおそれのある場合、②本人の心情の安定を害するおそれのある場合、③その他施設の管理運営上支障を生ずる場合には、おおむね許可を与えないこととする一応の基準を示している。

(3) 東京拘置所においては、死刑確定者の外部交通を、原則として、本人の親族(収監後に親族となった者で、外部交通の状況、親族となるに至った経緯等から、判決確定後の外部交通確保を目的としていることが認められる者を除く。)、本人について現に係属している訴訟の代理人たる弁護士、その他本人の心情の安定に資すると認められる者にかぎって許可することとしている。それ以外にも、裁判所又は権限を有する官公署あての文書、或いは訴訟の準備のために弁護士あてに行なう文書の発信等については、本人の権利保護のために必要かつやむを得ないと認められる場合には許可する取扱いとしている。

(二) 本件処分の適法性について

(1) 東京拘置所の担当者は、原告に対し、昭和六二年四月二七日死刑確定者としての処遇内容を説明した際、外部交通の相手方は原則として親族及び再審請求又は係属中の民事訴訟の代理人である弁護士に限定すること、外部交通を希望する相手方があれば事前に所定の用紙に記載して提出しておくことを告知した。

(2) 東京拘置所の担当者は、本件出願があったので、原告から事情を聴取したところ、同月一二日付読売新聞朝刊一二頁「気流」欄に掲載された「被害者の人権考えぬ廃止論」と題する死刑制度の存置に賛成する意見を内容とした一般読者の投稿記事に対して反対意見を述べたいということであった。

(3) 被告所長は、本件出願に係る発信のあて先が、予め原告から外部交通を希望する相手方として提出されていた者ではなかったことから、本件出願の許否について右(2)の事情を踏まえて審査した結果、死刑確定者としての原告の権利保護のために必要かつやむを得ないと認めるに足りる事情が存しなかったことから、当所における前記の死刑確定者の外部交通に関する取扱基準に従い、本件処分を行ったものであり、右処分に何ら違法な点はない。

四争点に対する判断

1  死刑確定者の拘禁は、当該被拘禁者に対し生命刑である死刑が執行されるまでの間、逃亡や自殺等によってその執行ができない事態とならないよう、確実にその身柄を確保し、かつ、死刑執行のため拘禁されている者に対する一般人の感情を慮って、被拘禁者を社会から隔離することを目的とするものである。また、死刑確定者は、社会復帰の望みはなく、いずれ生命を断たれることを甘受しなければならないという地位にあるため、これに対する拘禁については、特別の配慮が必要である。したがって、死刑確定者の拘禁は、刑罰を執行し、被拘禁者の執行終了後の社会復帰に向け、教誨又は教育を施すことを得る受刑者の拘禁とは、基本的にその性質や目的を異にし、刑罰の執行ではなく、教誨や教育を施すことを得ないという点においては刑事被告人の拘禁に類似するということができる。法は、この点の類似性から、その監獄における処遇については、刑事被告人に関する規定を準用することとしたものと解される。しかしながら、刑事被告人は、無罪の推定を受けるものであり、その拘禁は、専ら逃走及び証拠湮滅の防止を目的とするものであって、その拘禁に伴う必要やむを得ない限度の制約を受ける外は、市民としての自由な行動を保障されるべき地位にある者であるから、その拘禁と、前記のような特殊性をもつ死刑確定者のそれとは、およそその目的や性質が異なるものであるといわなければならない。そのような見地からすれば、法が死刑確定者の監獄における処遇について、刑事被告人に関する規定を準用することとしているからといって、法が、およそ死刑確定者を刑事被告人と同様の地位にある者として処遇すべきものとしていると解することはできないのであって、これを監獄内において処遇する責務を負う者が、前記のような死刑確定者の拘禁の目的及び性質に鑑み、その拘禁の目的を達するため必要な限度において、その裁量により、刑事被告人の拘禁におけるのと異なった合理的な制約を被拘禁者に課することも、法の許容するところであると解すべきである。

2  右の見地からすれば、その存在及び内容に争いがない被告ら主張の矯正局長依命通達の内容も、監獄において死刑確定者を処遇する職務を有する者一般に対して示したその外部交通に関する一般的取扱基準として合理性に欠けるところはないというべきである。また、弁論の全趣旨によって、東京拘置所が、右通達に基づき死刑確定者の外部交通に関して採用していると認められる被告ら主張の一般的取扱基準も、死刑確定者の監獄における処遇に通暁した者が、前記の死刑確定者を拘禁する目的、その拘禁の特質、死刑確定者の地位の特殊性に配慮し、ことに死刑確定者の心情の安定を重視して、採用したものとして、優にその合理性を肯定できるものといわなければならない。

3  弁論の全趣旨によれば、原告は、平成四年八月一二日付読売新聞朝刊一二頁「気流」欄に掲載された「被害者の人権考えぬ廃止論」と題する死刑制度の存置に賛成する意見を内容とした一般読者の投稿記事に対して反対意見を述べたいとの趣旨で本件出願をしたこと、被告所長は、前記一般的取扱基準に基づき、右信書の発送が、特に現時点において死刑確定者としての原告の権利保護のために必要かつやむを得ないと認めるに足りる事情が存しないとの判断により、これを不許可としたことが認められる。

死刑確定者といえども、思想及び良心の自由並びに表現の自由を享有するものであるが、その思想をどのような場において表明するかについては、その地位の特殊性から生ずる制約を受けざるを得ない。死刑確定者が、死刑制度存置論に対して一定の意見をもち、これを広く社会に表明したいと考えるのは、当然のことではあるが、新聞社に対してそのような意見を投稿することが、およそ死刑確定者の権利を保護するため必要かつやむを得ない事柄であるとまでは認めることができないのである。

そうであるとすれば、本件処分は前記の一般的取扱基準が正しく適用されて行われたものであって、これに関する被告所長の裁量権の行使について、逸脱・濫用にわたるような点を見いだすことはできないから、本件処分は、適法なものというべきである。

第三結論

よって、原告の被告らに対する請求は、いずれも理由がないので、これを棄却することとする。

(裁判長裁判官中込秀樹 裁判官榮春彦 裁判官武田美和子)

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